皆様はじめまして。
マヂカルラブリーinfoと申します。
著名なコラムニストの方々に混ざって大変恐縮ですが、この度コラムを書かせていただく事になりました。
主な活動としましては、ツイッターおよびブログで、マヂカルラブリーさんの出演情報などを投稿する事で、マヂカルラブリーさんとファンの方々のお役に立てばいいなと思い、2017年7月より始めました。ご本人様に活動をご理解いただいてはいますが、あくまでもファンがやっている非公式な活動です。
幼稚園の頃からバラエティー番組ばかり見ていた私は、高校を卒業すると同時に自然と劇場に足を運ぶようになりました。その中でたくさんの芸人さんの解散、引退、劇場の閉鎖などを目の当たりにし、ただ、漠然と面白いと思って見ているだけではダメだ。もっと目に見える形で応援したいと思うようになりました。それが活動の理由です。
オファーをいただいたものの、素人の私に一体何が書けるだろう。ギリギリまでお受けするか悩みましたが、1つだけ書きたい事が見つかりました。
ライブや配信、テレビ、ラジオ、雑誌など、マヂカルラブリーさん出演メディアのほとんどを見てきました。そしてそれを記憶し、記録してきました。
自分が観てきて感じた事や、お2人の発言などを引用しながら、あくまでマヂカルラブリーファン目線ではありますが、ファンとして追い続けたからこそ見えてきた事を少しでもお伝えできたら幸いです。
■キングオブコントの戦績
いまや漫才とコントの二刀流のイメージも強いマヂカルラブリーさんですが、初出場で3回戦まで進出し、その後も1-2回戦での敗退はないM-1と違って、キングオブコントの成績はかなり不安定です。
過去14回中、1-2回戦での敗退や不参加が大半で、準決勝進出は4回。その内、決勝進出が2回。
2013年にラップバトルのコントで初めて準決勝進出(現在クセスゴでやっているコントの原型)。その後もマイメロやカービィなどのコントで爆笑は取るものの著作権問題が影響しているのか敗退続き。
特に2016年は1回戦落ち→再エントリー→1回戦落ちと低迷。この年を境に単独ライブはコントメインから漫才メインにシフトチェンジしています。
2016年3月25日…単独ライブ『白7番』コント5本、漫才1本
2016年7月5日…1回戦不合格
2016年7月30日…1回戦不合格
2016年8月7日…単独ライブ『コンビニ』漫才6本、コント1本
■実は漫才版もある『こっくりさん』
初出は2021年1月24日『新春大宮セブン寄席 ~オール新ネタ&トーク祭り~』
「こっくりさんをやったらえらい目に遭ったよ~」で始まる“漫才”でした。
昨年12月20日のM-1優勝以降めまぐるしいスケジュールの中、この1ヶ月で新ネタを作る時間はなかっただろうし、なんのネタをやるんだろう?と思っていたところ、きっちり新ネタで驚かされ、しかも初めて『つり革』を見た時以上の衝撃がありました。
野田さん自身もかなり手応えがあったようで、
「元々はキングオブコント用にこっくりさんのネタ作ったんだけど、それを漫才に変えてやったら、それがすごい評判良くて」
「こっくりさんを世間に出さず終わるのはもったいないから、もう1回M-1出ようかな」
「M-1でやるのか、キングオブコントでやるのか迷ってるぐらい強いネタ」
(2021年1月26日 吉本自宅ゲーム部 野田ゲーチャンネルより)
M-1優勝直後に「もうこれでM-1出なくて済む」と安堵の表情を浮かべていた人とは思えない発言です。
テレビなどではリップサービスでビッグマウスな野田さんですが、この配信を“愚痴ダム” (当初の配信はミルダム、現在はYouTube)と呼び、本音を漏らす場としているので、この発言はあながちリップサービスではないと思っています。
次に『こっくりさん』のネタを見たのは、それから2ヶ月後の2021年3月24日『大宮セブンオールコント寄席~あまった時間は囲碁将棋とタモンズのコントの感想を話し合う~』
上記の配信での発言から、このライブでは『こっくりさん』のコントバージョンが観られるだろうと楽しみにしていました。率直な感想は「漫才で見て面白いネタだったけど、コントで見ても同じぐらい面白い!」
その後に行われた単独ライブでも『こっくりさん』はこの時とほぼ変わらない形で披露されていたので、キングオブコントの勝負ネタの1本として確信しました。
元々の着想はコントで考えていたが、それを形にして披露したのは漫才が先。そこからコントとして仕上げてキングオブコントに出場。このような流れで作られた『こっくりさん』はマヂカルラブリーさんのコントにおいて、かなり特殊なネタと言えます。
◎1月『新春大宮セブン寄席』…漫才(ネタ時間5分)設定:小学生
たかし君との思い出を再現。最後はこっくりさんが野田君に乗り移るが死んだ表現はない
◎3月『大宮セブンオールコント寄席』…コント(ネタ時間6分半)設定:高校生
野田君が死んで最後は村上君も攻撃されて死ぬ
◎6月『単独ライブ』…コント(ネタ時間8分)設定:高校生
野田君が死んで最後はこっくりさんが乗り移る
◎10月『キングオブコント』…コント(ネタ時間4分)設定:高校生
野田君が死んで最後はこっくりさんが乗り移る
(コントの設定は全て4時44分に心霊トンネルで)
■漫才論争とコント論争
キングオブコントでは、審査員の松本人志さんに「結局やってる事はつり革とあまり変わらない」と言われ、「あれは漫才でもできる」という、奇しくもM-1の漫才論争とは真逆の“コント論争”に発展しました。「それは禁句です!」と即座に返す姿を見て、私もかなり悔しい気持ちになりました。
何故なら、野田さんにはネタ作りにおいてこんな美学があるからです。
「(こっくりさんは)村上が外からツッコむネタなのね、漫才でやった場合。そうなってくると俺は悔しいのよ。漫才でやれるネタをコントでやるっていう状態が。俺はそれをやるのが悔しいから、漫才とコントは別物にしたい。だからラップバトルのネタとかは俺がツッコミしてんのよ。コントは別のものですよっていう」
「こっくりさんをコントでやると、漫才引きずってる感あるのよ。俺はR-1、キングオブコント、M-1っていう三種類で全部別のものをやって優勝するのが気持ちいい。漫才のものを変換させただけで優勝したら納得しなくない?これから挑む芸人たちが。だからなるべく遠いものにしたい。何もかも」
(2021年1月26日 吉本自宅ゲーム部 野田ゲーチャンネルより)
実はファンの間でもキングオブコントで『こっくりさん』をやる事については意見が割れていました。
単独ライブを観られた方にアンケートを取った際も『つり革』との相似性について言及していた方が多く、「つり革みたいで面白かったのでキングオブコントでもやって欲しい」「面白いけどつり革みたいなのでキングオブコントではやらない方がいい」の意見は真っ二つに分かれていました。
実際問題、準決勝までの審査員は、ファイナリストに押し上げている事から、「つり革に似てはいるが面白かった」という松本さんの意見に近い肯定派が多かったはずです。
では何故、美学に反して『こっくりさん』をコントでやったのかと問われれば、
「今年はこれを超えるコントが出来なかった」という一言に尽きると思います。
「来年のスケジュール次第なんですけども、仕事がもうちょっと落ち着いてって、もうちょいネタと向き合えるんであれば、(M-1もR-1も出ないので)キングオブコントに向けていいと。これまで漫才、ピンネタ、コント3つ作った内の当たったものが優勝していっただけで、今はコント全集中でもいいんですよ。コント全集中した時のキングオブコントの向き合い方って、人生で初めて。芸歴19年目ですけどやった事ないんですよ」
(2021年10月5日 吉本自宅ゲーム部 野田ゲーチャンネルより)
そう語る野田さんの表情は、とても清々しく凛々しくもありました。
2021年、これだけ時間がない中でも決勝にいけるほど強いネタが作れるのですから、来年以降コントに全集中したマヂカルラブリーさんを想像すると、今は楽しみでしかありません。
■ニュートラルな村上さん
村上「やるんですか?来年も」
野田「もちろんですよ。来年も出ますよ。勝つまでやります」
村上「いいんじゃないですかね、来年ぐらいはお休みしても」
(2021年10月7日 マヂカルラブリーのオールナイトニッポン0より)
村上さんのスタンスは傍から見るととても不思議です。
キングオブコント直後の反省会でも
野田「僕らは来年も再来年もずっと(キングオブコント)出て」
濱家「もうやめてください、野田さん。死にますよ、もう」
野田「キングオブコント優勝したら2周目突入する」
西村「え、2周いくの?」
濱家「村上くんが持たないですよ」
村上「僕はもう限界なんで。心が壊れちゃう…」
常にお笑いソルジャーな野田さんに対し、自身を『怠惰』の2文字で表現する村上さんは、このように消極的な発言も多いです。
でも本当に怠惰な人間はチャンピオンになれるはずがありません。
2021年10月4日『キングオブコント2021 アフタートークライブin大宮』で、野田さんは早速こんな分析を語っていました。
「今回の審査傾向や結果を受けて、バカバカしさやキャラクターを重視した“パワー系”より、ストーリーや展開を重視した“シアター系”(演劇寄り)のコントが有利になるだろう」
それを受けて周りの芸人さんが「マヂカルラブリーがシアター系のコントできんの?」と若干いじり気味に言うと、村上さんは食い気味に「できる」と即答していました。こちらも村上さんの本音であると思っています。
たまに村上さんが“じゃない方芸人”に括られている時がありますが、私から見て、お2人にそこまでのパワーバランスの格差は感じません。村上さんが野田さんを立てる為に、意識的に1歩引いてフォローに回っている印象があるからです。
本音は出場してもしなくてもどっちでもいいけど、野田さんが出ると言ったら出る。
村上さんのこのニュートラルな感じが、マヂカルラブリーというコンビを最高のバランスに保っていると思います。
■M-1優勝は通過点
趣味で作っていた野田ゲーをアプリ化し、テレビ出演が増えました。
2017年のM-1決勝進出以降、収入が増え、予選時のモニターを自腹で手配しなければいけない野田ゲーをR-1の勝負ネタにする事ができました。
そして、2020年のR-1チャンピオンになりました。
BIGバラエティー番組でも多数取り上げられ、野田クリスタルというキャラクターと野田ゲーが広く認知されました。
スーパー野田ゲーPARTYの開発が決定し、クラウドファンディングで1300万を超える支援額が集まり話題になりました。
キャラクターの認知効果もプラスに働き、2020年M-1チャンピオンになりました。
M-1優勝をきっかけにテレビで見ない日はないほどの売れっ子芸人になりました。
4ヶ月後にSwitchから発売されたスーパー野田ゲーPARTYは、その宣伝効果もあって、売り上げ8万本を超えるヒットゲームになりました。
そして、スーパー野田ゲーWORLDの開発が決定しました。
こうして列挙してみると、2020年までのマヂカルラブリーさんは、全ての出来事が相乗効果を伴っていて、その集大成がM-1優勝という物語だと思っていました。しかし、きっとそうではありません。
2021年キングオブコントのファイナリストになった事で、夢物語だった前人未到の三冠王は、いまや手の届く現実的な目標となりました。今回の9位という結果も、必ず三冠王に繋がる通過点と信じています。
チャンピオンともなると、多大なるプレッシャーがかかり、挑戦する事が怖くなりそうなものですが、マヂカルラブリーさんは、今が1番楽しいとも語っています。
何度ゲームオーバーになっても、何度でもリセットボタンを押し、トライ&エラーを繰り返し、やがて攻略する事でしょう。
最後にこの言葉を引用して終わりにします。
村上「ホントにいいっすよねぇ、優勝して終わった人達」
野田「ヤなことあったまま終われないでしょ」
(「M-1グランプリ2020」x「Creepy Nuts」スペシャルムービーより)
まだまだ終われませんよね。お笑い王になるまでは!